「重要なことは、いかなる未来を今日の思考と行動に折り込むかである」かのピーター・F・ドラッカーの言葉です。あらゆる種類の人々にとって、大変示唆に富んだ言葉であると思います。
先日、ある会社で役員に昇格した女性管理者と打合せを行いました。会社から彼女に求めたことは、担当エリアにおける当該事業のビジョンを描くことです。それまで、管理職としての仕事は、(経営者から)与えられたビジョンを、どうやって実現していくかということでした。それをハイレベルで実行するために、何をやるか、どうやるか、誰にやらせるか・・・を常に考え、それを見事に実現してきたのでした。
そうした成果を買われての今回の昇格ですが、最初に本人の口から出た言葉は、「与えられたものをどうやるかということなら自信がありますが、その目指すものを自分で創るということは苦手かも・・・」というものでした。
彼女にとっての「いかなる未来」は、これまでは(経営者から)与えられたものでした。それを実現するために、そのあるべき姿を今日の思考と行動に折り込むことができたから、期待通りの成果に結びついていたわけです。それが昇格と同時に、「いかなる未来」はもう一段上の「未来」きっと今の彼女にとっては途方も無く遠い未来・・・。そんな未来を、今日の思考と行動に折り込まなければいけなくなったのです。苦手と思って当然です。(自分が役員になったことで、)思考と行動の規範がまったく変わってしまったことに彼女は気づいているのです。
すべての経済活動は目的に向かわなければいけません。そして、目的に到達するにはその具体的な姿が(イメージできて)なければいけません。いわゆるゴール(あるべき姿)です。このゴールは自社のおかれた状況や世の中の環境変化など、経営環境の変化、時間の経過によって当然変わってきます。こうして変化する「未来像」を絶えず意識し、それを今日の思考と行動に折り込むことによってはじめて、今の思考・言動は、合目的なものとなるのです。そうしたプロセスを経ない思考や言動は、およそ過去からの延長であり、従来のやり方の踏襲であります。環境が変化しているのに、これまでのやり方に固執して変えようとしない。変えなければいけないことに気付かない。このような始末では、激変する競争環境の中ではあっという間に置き去りにされてしまうことでしょう。
我々にとって大事なことは、絶えず未来を構想することです。もう少し正確にいうならば、「より好ましい未来」を構想することであり、ここでいう「好ましさ」を組織で共有することであると考えます。
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