前々回のレポートで、「今年はコンプライアンスへの対応コストが増加する」と書きましたが、早々にそうした対応が求められるような事件が起こりました。
中国河北省の天洋食品による、「農薬入り餃子」事件は、いまだその全容は明らかになっていませんが、日本の食生活に大きな影響を及ぼすことになりました。
今回の事件における問題点のひとつは、その製品を扱っていたのがコープであったという事実です。誰に聞いても「コープ(の扱う製品)はきっと安全である」という暗黙の前提があり、そのコープからこういう問題製品が販売されたことが、心理的なショックを一段と大きいものにした感があります。
もうひとつは、悪意を持ってやられたら、どうにも防ぎようがないという事実です。内部統制の仕組みを持ってしても、複数の関与者によって共謀されれば牽制は効きません。ましてやこうした食品は、全品検査することも不可能ですので、ある程度はそこで働く人達の良心(職業倫理)に依存(信頼)せざるを得ないわけです。その信頼がこうして完全に崩されたわけですから、当面は中国産の加工品はもちろんのこと、類似する冷凍食品などにも広く影響が及ぶことは、想像に難くありません。
事実、ある中国産の原材料を扱っているメーカーでは、事件直後から大量の問い合わせが殺到し、その対応に忙殺されたと聞いています。先進国では「食の安全」は大前提ですから、その前提が崩れるような事態になれば、事業の根幹にまで影響が及ぶことになりかねません。永続を前提とした企業は、この「安全」を担保するに足るだけの十分な対応(体制)を日ごろから意識しておく必要があります。
こうした事態を予防するには、2つの側面からのアプローチが必要です。一つは内部統制をはじめとする内部牽制の仕組み(制度)づくりです。先ほど、(内部統制も)共謀されたら防御しようがないと述べましたが、それでもそうした「スキ」を最小限にするという意味で内部統制制度を構築する意味は大きいといえます。現在、(内部統制制度の構築は)大きな企業(上場企業ないし、会社法上の大企業)にのみ課せられていますが、中堅中小企業においても積極的に取り組んでいくべきテーマとなりそうです。
もう一つのアプローチは、教育という面です。いくら制度を整えても、それを運用する人(あるいは人の心)に問題があれば、悪意を持って悪事を働くこともあるでしょう。また、悪意は無くとも問題行動を連発し、結果的に顧客の信用を大きく失墜させることもあり得ます。仏に魂を吹き込むが如く、教育によってそもそもこうした問題が起こりにくい風土づくりを同時に進めていく必要があります。
この二つが伴わない限り、今回のような事件や事故を防ぐことは難しいといわざるを得ません。コスト(人件費)を安く上げることにだけに意識が行き、こうした安全を確保するためにコストをかけるという意識が、一部の事業者などの間で薄れつつあるようにも思います。こうした思い違いはいつか大きなしっぺ返しとして戻ってきます。
改めて客観的な視点から、事業のあり方を見直してみる良い機会かもしれません。それが差別化要因に繋がる可能性もあると思います。
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