「為さざるなり 能わざるに非ざるなり」これは、『孟子』という中国古典にある言葉です。この意は、仕事が出来ないのは、やろうとしない(為さざるなり)からであって、能力がないからではない(能わざるに非ざるなり)ということです。一見難しそうに見える仕事でも、たいがいはやる気になって取り組めば成し遂げることができるというものです。
最近は、少し難しい仕事にぶつかると、その仕事に向かうたびに何かと言い訳をして、自分には能力がないとか向いていないと諦め、最後には心まで患ってしまうというケースが増えてきました。しかしその多くは、先の言葉の通り、自分がやろうとしないことが原因であるのにも関わらず、その現実と向き合おうとしていないのです。まして、それを自分は能力がないから仕方がないのだと片付けてしまうのは、あまりに心が不健康であると言わざるをえません。
メンタルヘルスケアが叫ばれる時代の背景には、こういう心の不健康な人材が増加しているという側面があることも見逃せません。
では、どうすれば、こういう状況を回避することができるのでしょうか。それにはこうした悪しきモノの考え方を持つようになる前に、より好ましいモノの考え方ができるように仕向けるほかないのではないでしょうか。社会人にとって、働き始めの3年間が非常に重要であるといわれます。この3年間でより良い仕事をするための基本(これは主に物事の捉え方とか、今風に言えば空気の読み方のようなことが大半であるといえます)をみっちり叩き込まれ、ビジネスパーソンとしての土台が形成されていくのです。ここを中途半端に過してしまうと、先のように間違った認識が形成され、本来持っている能力を発揮することができず、嫌なこと、苦手なことからはいつも逃げ、組織の中においても自分の役割を広げようともせず、ただ漫然と時間を浪費していくようなことにさえなりかねません。もし、組織の構成員が皆こんな人達ばかりだったらどうなることでしょう。組織の成長発展はおろか、現在のような厳しい状況下では、存続することすら危ういといわざるを得ません。
こうした組織にしないためにも、早期の教育が重要であることは先にも述べたとおりです。もう一方で、そういう人材がそこに居続けにくい風土を作り上げることも重要なテーマであると思います。確かに安心して働ける職場を作ることは重要なことですが、ただ甘えが許される環境を用意することではありません。より好ましい大人になるためには、時には厳しい現実に向き合わせることが必要です。安心して働ける職場とは、失敗しても、上手くいかなくても、チャレンジし続ける本人への後ろ盾があることです。そうした中でも自己を変革させていく意欲を持てず、いつまでも逃げてばかりなら、やはり組織にとっても本人にとってもお互いの為にはならないことは言うまでもありません。
人材の有効活用が組織運営の重要な要件となってきています。その一方で、このように一人ひとりの可能性を最大限に発揮させることが難しくなりつつあります。これらの問題を克服し続けることができる企業が、これからも大きく活躍していくことは言うまでもないのです。そのための変革を怠ってはなりません。
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