靴小売の株式会社エービーシー・マート(以下ABCマート)は、高付加価値経営で過去最高益を更新し続けています。
ABCマートは、小売業ながら独自のビジネスモデルで、高い収益性を実現しています。具体的に21年3月期の決算書からデータを拾ってみますと、収益性の代表指標である総資本対営業利益率は、実に24.9%となっています。ちなみに、ユニクロを展開するファーストリテイリング(以下ファストリ)の20年8月決算における同指標は22%程度ですので、それ以上に資本効率が高いといえます。
また、本業の儲けを示す売上高対営業利益率は、ファストリの15%に対して、ABCマートは21%弱です。この6%の差は、粗利率の差にありました。売上総利益率を見ると、ファストリの50%に対して、ABCマートは56%に上ります。ファストリは、SPA(製造物流小売業)と呼ばれるビジネスモデルで、小売業であるにも関わらず高粗利益率を実現していますが、ABCマートはそれ以上の粗利益率を計上しています。
ABCマートは、靴小売業ですが、いわゆる自社ブランド商品(「ホーキンス」、「バンズ」)を持っており、この自社ブランド品は流通を通さず、直接メーカーと取引することでコストを抑えています。この自社ブランド商品の販売ウェイトを高めることで、全体の利益率を高めることに成功しています。
粗利益率を高めることで、収益構造は劇的によくなっています。ABCマートは、同業他社に比べ、売り場の販売人員が4割ほど多いそうです。通常は、それが人件費の増加、販売管理費の増加に繋がり、利益を圧迫するわけですが、高付加価値ゆえ、それだけの人件費負担をしても十分高い利益率を実現できるわけです。売り場の販売人員が多ければ、それだけ顧客に対して十分なサービスができますので、現場での顧客満足は高まる可能性が高いといえます。そうなれば、販売に好ましい影響を及ぼすことは想像にかたくありません。
こうした高付加価値型の経営は、販売費にも十分なコストをかけることができます。そして、それが顧客満足を増加させる好循環を実現します。
もはや、単なる薄利多売の安売り戦略は成り立ちません。顧客への提供価格は低く抑えつつ、なおも劇的なイノベーションにより高付加価値でなければ、顧客の信頼を勝ちうるためのコストも捻出できないでしょう。そういう商売では、既に勝負にならないことが、こうして急成長を遂げている企業の利益構造から読み取ることができます。
我々は、こうした高付加価値経営から多くを学び、自らの経営にも活かしていかなければいけません。
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