自動車・電機といった業種を中心に、業績の回復が顕著です。自動車業界を例に取りますと、トヨタ自動車の2009年4-6月期では、同1-3月期に比較して当期利益で7,700億円以上の改善となっています。といってもこの期間の売上高の増加幅は3,000億円弱ですので、5,000億円近いコストダウンによって利益改善を図ったという見方ができます。
同じく日産自動車はどうでしょう。同じ期間で当期利益は2,600億円程度の改善が見られますが、この期間の売上高はなお2,400億円程度の減収です。よって、こちらも5,000億円程度のコストダウンによる増益効果ということになります。
このように、業績が回復傾向にあるというものの、まだまだ増収による収益構造の改善ではなく、コストダウンによる収益構造の改善であることが分かります。
ただし、こうしたコストダウンによる収益構造の改善は、もう一方で落とし穴になる可能性もあります。コストの多くを占めるのが人件費ですから、大幅なコストダウンでは当然人に関わる費用の削減は欠かせません。こうした人材へのコスト削減が、下手をすると中長期的な企業の競争力を損なう可能性があることにも注目する必要があると思います。
企業の競争力の源泉は、人材にあることは否めない事実であります。人的コストの安易な削減は、組織の競争力を奪い、中長期的な成長発展を阻害する可能性すらあると理解すべきでしょう。
企業における競争優位性とは、いったいどこから生まれるのか。私は、社員一人ひとりが“成果”に焦点を当てて仕事ができる、そういう組織(環境)づくりにあると思います。一人でも多くの社員が、成果を意識して仕事ができたなら、そのこと自体が組織の競争力となり、競合の追随を許さないものとすることができるのではないでしょうか。また、それを積極的に後押しするような環境創りこそ、競争を常とし、その中で勝ち続けることのできる強い組織ができあがるための条件であると思うのです。
一方で、成果とはどうすれば上げられるのでしょうか。成果を定義するいくつもの示唆に飛んだ名言があります。NECの元社長である故関本忠弘氏は、「成果=能力×やる気×ツキである」という言葉を残しています。また京セラの創業者である稲盛和夫名誉会長は、「成果=能力×熱意×考え方」であると・・・。
いずれにせよ、能力を高め、熱意(やる気)を持って、より良い考え方で仕事に当たれば、自ずとツキにも恵まれ、実力以上の成果を出すことができる。それが更なる好循環を生み、組織全体がそういう方向に向けば、非常に大きな成長エンジンとなるということは想像に難くありません。
今も昔も、組織の盛衰は、紛れも無く“人材の優劣”によります。ただし、ただ優秀な人材(能力の高い人材)がいればそれで良い、ということではありません。組織において優秀であるとは、「成果を伴う」ということですから、そこに真に情熱を傾けられるか、より好ましいものの考え方で仕事に当たれるか、という二点を伴わなければ、本当の意味で優秀であるとはいえません。これら能力以外の要件は、もともと持っているものでもなく、一朝一夕で身につくものでもありません。組織の中での日々の「しつけ」や「動機付け」があって、はじめて生まれてくるものです。ほうっておいて自然発生的に生まれてくるものではないのです。
組織を運営する経営陣は、そのことを強く認識する必要があります。そして、そうした人材を創造するためには、ある程度の時間もコストもかけていかなければいけません。それらが、安易なコストダウンの犠牲になるようなら、継続的な組織の発展は非常に難しいものとなるでしょう。
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