平成20年4月1日から施行される改正パート労働法も労使関係や労働観の変化を感じさせる。この法の概要は、正社員と同視すべき短時間労働者(以下社員同一視パートという)の差別的取り扱いの禁止、それ以外の短時間労働者に対する「均衡」配慮義務、というものであるが、地味ながらもインパクトのある法改正である。この背景には、日本の大命題である少子化対策と格差是正問題があるが、この改正では「同一労働同一賃金」という従来スローガン的であった原則を法令に入れるというエポックメイキングなことが行われた。現在一般的な個別契約自由の原則からすれば、同一労働同一賃金原則は理想論であり、現実は企業の雇用政策と労働者本人の生活環境や扶養家族の制約など、様々な要因から適用が非常に難しい。また人事制度の分野からみれば仕事と賃金をマッチングさせる職務給制を推奨しているようにも見えるが、長期育成型人事に力点を置く日本企業の政策とはそぐわないケースも多いだろう。長期勤続が企業内習熟を促し、それにつれて(あまりコントロールがされていないかもしれないが)基本給が上昇する、というごく一般的な賃金システムに社員同一視パートをいきなり適合させるのは困難である。ややもすれば、社員同一視パートと同じ仕事をしている正社員の給与レベルを下げることに腐心させてしまうし、法的保護が高コストを招いて逆に雇用を閉ざしてしまうなどの懸念材料もある。いかにして社員同一視パートにしないで済むか、という表面的な対応策も当面、人気を博するだろう。
しかし一方で、先進的な企業では労働力不足を補う対策、さらには優秀な人材を確保する対策としてパートを正社員化する動きが続々と始まっている。もちろん単にフルタイム勤務にするだけでなく、育成、責任、処遇などを総合的勘案した新たな人事制度を構築しているのだろう。短時間しか就労できなくても優秀な人材は多く、単に労働時間の長短だけで大きな処遇差がついてしまうことは確かに不合理である。この法が目指すのは少子化社会における女性労働力の活性化にあるため、同一労働の「労働」は単なる職務の分類ではなく、「責任・能力」と解すべきである。この環境に適応できない企業は徐々に優秀な人材(パートに限らず正社員からも)から敬遠されていくだろう。
この法自体はほとんどが努力義務と配慮義務であるため拘束力は低いが、立法には世の流れを作る(あるいは沿う)特性があるため、改正パート労働法の主旨も徐々に社会に浸透し、常識となっていくだろう。そしてパートの均等・均衡処遇をきっかけとして正社員のあり方を問うことになる。そのときの人事制度のキーワードは、「個」、「ワークライフバランス」、そして「自由(選択)と自己責任」である。
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