合併、分割、営業譲渡、M&Aなどでの企業再編が増加している。これにあたっては商法と税法の分野が中心課題になるが、人事労務の分野は後回し、もしくはおざなりにされることが多い。しかし、企業再編にあたって人に関する課題は多岐に亘り、かつ再編スキームの根本に影響を与えることがあるため、初期段階で検討課題としておくべきである。
たとえば、一定の法的ステップが要求される「分割」においては、通常の労働法規以外に労働契約承継法や改正商法が関係するため、株主総会に至ってから手当てをしては手遅れになる。手遅れというのは「分割無効」の訴えがあった場合に非常に弱い立場に追い込まれるということである。「合併」と「分割」では原則として労働条件は当然承継(そのまま移行)されるため、これを理由に一方的に変更することはできない。一方、営業譲渡と一般に言うM&Aの場合は、非常に乱暴な言い方になるが、譲渡する側の会社の雇用関係はリセット(解除)され、譲渡される側の企業が従業員を選別、または新たな労働条件を提示することはできる。もちろん行政の指導としては「当然承継」が望ましいとしているが、法的な拘束は未だない。尤も、譲渡する側の会社の雇用契約消滅に対して「不当解雇」の訴えが起こることはあり得る。これには「整理解雇の法理」が適用され、解雇せざるを得ない理由(必要性)、人選の合理性、解雇回避努力、十分な話し合い、が要求される。
また、企業再編は従業員にとって「使用者」が変わるという労働契約の大きな変更になるため、社内に不安が拡がることが多い。特に被合併(消滅)会社、分割で縮小される側の会社、さらには営業譲渡で縮小・消滅する側の会社、の従業員は往々にして疑心暗鬼になるため、早めの対処が必要である。しかし戦略上、期日ぎりぎりまで極秘にしなければならない再編事案の場合は従業員に対して突然の発表にならざるを得ず、混乱や紛争は覚悟しておかなければならない。
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