「1ヵ月定期を作って頂きたいのですが」。銀行の担当者から「唐突に」お願いされて、一瞬耳を疑った方も多いのではないでしょうか。
ここ何年もの間、金融機関の売り込みは与信系の商品に集中していました。とくに私募債やデリバティブ(金融派生商品)には、ことのほか熱心に取り組んできています。これらの商品は、手数料などの収益が前倒しで発生するため、各銀行とも手を緩めているわけではありません。それに加えて、ここにきてさらに預金獲得にも力が入るようになりました。何故なのでしょうか。
金利の追加引上げについて、議論が一段と活発化してきています。確かに金融機関が預金獲得に力を入れ始めたのには、これまでの市場金利上昇が密接にからんでいます。ただ、それだけではありません。 昨年ペイオフ解禁の範囲が拡大されました。まだご記憶に新しいことと思います。念のため、変更された事柄をおさらいしておきましょう。平成17年4月からは「無利息、要求払い、決済サービスを提供できること」という3つの要件を満たす「決済用預金」に該当する預金のみが全額保護となり、それまで全額保護されていた預金は「決済用預金」に該当しなければ定額保護(1金融機関ごとに預金者1人当たり元本1千万円までとその利息等が保護)となりました。具体的には当座預金と、利息のつかない普通預金を除き定額保護(=1千万円)を超える預金が保護の対象から外れたことになります。金融機関は、この「保護の対象から外れた」部分について預金保険機構に保険料を支払う必要がなくなったわけです。
今、メガバンクの本支店間レートは年0.23%あたりまで引き上げられています。かたや1ヵ月定期の金利はせいぜい年0.15%ですので1千万円を超える部分について利鞘は十分稼げることになります。
一方、決済用預金についてはどうなのでしょうか。実は預金保険機構に支払う年間保険料率は、今年の4月に0.115%から0.110%に引き下げられているのです。つまり、当座預金には利息が付きませんので、支店サイドでは残高に対して今でも0.1%以上の稼ぎが出るわけです。しかも、保険料率は4月まで変わりません。市場金利が上昇すれば一般的に本支店間レートも引き上げられますので、何もしなくても支店収益は改善されることになります。さらに、預金業務の推進には、融資と違って本部稟議など営業コストもさほどかかりません。
これでご理解頂けたでしょう。ペイオフ解禁と市場金利上昇のおかげで預金は久方ぶりに金融機関の収益源に返り咲いたのです。
年度末にかけて「他行預金の預け替えをお願いします」といった懐かしい声が相次ぐと予想されます。
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