「今月は貸出枠いっぱいまで使って下さい」。期末・年末など節目ごとに金融機関の担当者による、お願い業進が展開されます。当座貸越やコミットメントラインなどは約定書に極度額の記載があり、借りる側も当然認知しています。しかし、手形貸付については金融機関側が勝手に設定していることも多々あり、「極度額」は借りてみないことには分かりません。当然のことですがコミットメントラインなどと違って、借り入れの都度、金融機関の了解が必要になります。
「お願いされたとは言え、借入の実績を作っておいて、いざというときの保険にしよう」と考える企業も多いのですが、残念ながらこの「実績」はあてにはなりません。金融機関に対する営業協力的意味合いで借りる場合、借りた資金はそのまま預金口座に残っています。金融機関にとっては相殺できる「負債」があるわけですから、リスクはほとんど無いに等しいと言えましょう。一方、「実需」に基づく借り入れの申し出に対しては、資金要因から返済引き当てまで、厳しい質問が待っています。
ここで、金融機関の側から極度取引について考えてみましょう。例えば、在庫資金に対する貸出は、在庫積み増しにより資金需要が発生する時期に発生し、売上代金の回収資金によって返済を受けるのが自然な流れです。取引先に信用面での不安がないのであれば、あらかじめ与信枠を設定しておいて、臨機応変に融資と回収を繰り返すことで、個別稟議を省略することができます。つまり事務の効率化になるわけです。
しかし、実際には融資残高が借入時点の額に張り付いていて、回収された資金が預金に残るケースが多いのではないでしょうか。これは取引先から見れば極めて資金効率が悪いことを意味します。
また、個々の融資取り組みに了解が必要とは言え、賞与資金など定例化された「極度内貸出」に関しては、ほとんどノーチェックになりがちです。要するに「貸しっぱなし」になってしまうのです。一方、企業の側でも、このように「無審査」で資金を借りることが習慣化してきますと、どうしても資金管理が甘くなってしまいます。「賞与資金を多めに借りておこうか」といった言葉が出始めると要注意です。
こうしたなかで、賞与資金を極度取引で調達し、結局その借入金が在庫資金に化け、挙句の果てに経営破綻した例が実際に起こっています。大量の返品を受けていたにもかかわらず、約定返済が借入の条件になっていなかったため資金ショートせず、対応策が先送りされたのです。資金繰りの悪化が表面化したのは半年先の賞与支給時でした。
資金使途に応じて借入調達し毎月返済を繰り返す。この「あたりまえ」が身を守ることもあるのです。今一度、基本に立ち返って頂くことをおすすめします。
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