中小企業のM&Aにおいて、譲渡サイドは「オーナー経営者」が「取引先」と「従業員」に内密でM&Aを進めていくケースが一般的です。理由は、M&Aを進めていることが明らかになることによって取引先や従業員の離散を招くリスクがあるためです。貴重な経営資産である取引先や従業員が離散してしまえば、M&Aの成功どころか事業の存続すら危うくなってしまいます。そのためオーナー経営者はM&Aの最終契約後に取引先や従業員に発表することを希望します。
一方で譲受サイドは最終契約の前に譲渡企業の取引先や従業員に発表することを希望します。M&Aで譲渡企業を譲り受けた直後に、取引先や従業員が離散してしまうことを懸念するためです。
「M&A取引の事実を従業員や取引先等の利害関係者に公表すること」を「ディスクローズ(disclose)」と言います。「ディスクローズのタイミング」はM&Aを成功させるうえで重要なポイントの一つですが、弊社では基本的には最終契約直後のディスクローズをお勧めしています。これまでの経験上、M&Aの事実のみによって取引先や従業員が離散するケースは少なく、M&A後の運営方法によって取引先や従業員の離散を防ぐことが可能だからです。
しかしながら、下記のようなケースでは最終契約前のディスクローズが必要です。
- 取引先との契約書上に「資本構成や代表者の変更時には
取引先の承諾が必要」といった条項が入っている場合。
- M&Aの形態が事業譲渡の場合。
従業員は譲受企業への転籍となりますので、事前に発表して転籍同意書を取得しなければなりません。
また、次のような取引先・従業員に対しては最終契約前のディスクローズを検討する必要があります。
- 譲渡企業の取引シェアの大部分を占める取引先。
- 営業、製造部門の責任者等、退職することによって
譲渡企業の事業が滞る可能性がある従業員。
上記から、特定の取引先や従業員に依存していない企業の方が、M&Aの実現可能性は高くなると考えることができます。
名南通信2007年4月号より
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