先日、中小企業経営者を対象に開催したM&Aセミナーにおいて参加者にアンケートを実施したところ、「M&Aを利用してクリアしたい経営課題は何か」という問いに対して、最も多かった回答は「異業種への進出」でした。
異業種への進出にM&Aを利用するメリットは「圧倒的なスピードで事業に必要な経営資産を獲得できる」ことです。自力で異業種へ進出する場合、「顧客の開拓」「人材の育成」「運営体制の構築」等、多くの課題があり、克服するためには相応の「時間」と「コスト」がかかります。一方で、M&Aを利用すれば事業に必要な「顧客」や「人材」、「ノウハウ」等を一夜にして獲得することが可能です。
異業種への進出にM&Aを利用するメリットがあることは間違いありません。しかし現実に成約している中小企業M&Aのほとんどは同業者同士のM&Aであり、異業種進出を目的としたM&Aが成約に至るケースは稀です。以下で、その理由を説明していきます。
1)相乗効果が乏しい
同業者同士のM&Aであれば、顧客の拡大・ノウハウの共有・重複する部門のリストラ等、M&Aによって様々な相乗効果を期待できますが、異業種の企業とのM&Aの場合はあまり相乗効果を期待できません。そのためM&Aの条件交渉において、相乗効果を見込める同業者の方が譲渡希望者にとってより有利な条件を提示することが可能であり、成約する可能性が高くなります。
2)譲渡企業の経営者の引退
中小企業M&Aにおいて譲渡企業がM&Aを行う目的の大半は、「後継者難企業の事業承継」です。事業承継目的のM&Aでは成約後、三ヶ月.半年の引継ぎ期間を経て譲渡企業のオーナー社長は引退します。オーナー社長以外に経営全般に精通している従業員が存在する中小企業は少なく、譲受ける企業は自社から新たに経営者を派遣する必要があります。同業であれば事業に対する理解があるため、比較的スムーズに経営を承継できますが、異業種の場合、短期間のうちに経営を上手く承継することは容易ではありません。
上記のような理由から同業者同士のM&Aの方が譲渡企業・譲受企業の双方にメリットが大きいケースが多く、異業種とのM&Aは少なくなっています。
(名南通信2007年5月号より)
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