先日、あるお客様から次のようなご相談がありました。甲所有の土地Aの上に甲の親族である乙が建物Bを建てたが、甲乙間では、貸借契約はなく、乙が甲所有の土地Aの公租公課を払って貸借している状態が長期間続いていた。近年、甲・乙ともに死亡し、それぞれの相続人に土地、建物が相続された。乙の相続人(丙)より、長期間無償で占有していたので、取得時効が成立しているのではないか。時効取得できなくても、乙は土地Aの公租公課を支払っており、賃貸借していたつもりなので、このまま使用できるのではないか。とのことでした。当方からは次のように回答しました。
乙が、善意でも悪意でも土地Aを自分のものにすべく占有していたわけではない(土地Aの公租公課を負担していた)ので、占有による取得時効は成立せず、また、公租公課を負担している場合、それを賃料であるとし、賃貸借関係にあるとの主張については、判例では、「公租公課を負担しているだけでは、賃貸借関係とは言えず、使用貸借である」、としているため、本件も同様と考えられ、乙から丙へ使用借権は相続されないので、甲の相続人より立退き申し入れがあった場合は受けざるを得ず、建物Bの買取請求権も丙は有していないと考えられます。と回答。
(判例)東京地方裁判所平成9年1月30日判決(判例時報1612号92頁)
使用貸借契約における借主は、借用物の通常の必要費を負担する義務を負うところ(民法595条1項)、不動産の使用貸借の場合、その公租公課は、特段の事情のない限り右の通常の必要費に属するものと解するのが相当である。
借地借家法により、強く保護される賃借権に対し、使用借権は、使用目的の終了や借主の死亡により終了し、よって相続はされず、かつ使用中でも譲渡性はなく、土地が第三者へ譲渡された場合その第三者には対抗できない等々、非常に弱い権利です。しかし、使用貸借は多くの場合、親子間や親族間でなされることが多く、法的な解釈のみでは解決できない複雑な問題が生ずることとなり、トラブルの元となることがあります。特に借主側は、「借主が強い」という賃貸借の解釈を使用貸借の場合も同様と思い込みがちであり、権利関係に変動があった際にトラブルになるケースが多いようです。まず、無償使用している土地等がある場合は、その経緯、実態的には使用貸借か、賃貸借かの確認をすることは相続対策の観点からも重要な課題の一つではないでしょうか。
(名南通信2007年11月号より)
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