今回も前回に引き続きまして、定款の積極的な活用方法についてご紹介いたします。
多くの中小企業では、社長がそのまま株主となっていることが多く、社長が株主総会を開けない場合、会社の運営がストップしてしまうおそれがあります。このような場合に導入の検討に値するのが「株式に関する属人的な定め」(以下「本制度」といいます)です。
本制度は、発行する株式の全部について譲渡制限の定めを設けている株式会社において、1.剰余金の配当、2.残余財産分配、3.議決権についてその持ち株数にかかわらず株主ごとに異なる取り扱いを行う旨を定款に定めることができるものです(会社法第109条第2項)。
例えば、友人5名がそれぞれ等しい割合で出資し会社を作った場合、5名が円満に事業を続けている間は、特に問題は生じません。しかし、社長と他の4名とに意見の相違が起こり、その4名と連絡が取れなくなってしまうと、5分の1の株式しか持っていない社長だけでは株主総会を開いて重要事項を決議することができなくなってしまいます。そこで本制度を利用し、予め社長の持っている株式を他の株主が株主総会に出席しないことを条件に議決権が5倍となるとしておきます。このような定款の定めをしておくことにより、他の4名の株主が株主総会に出席しなければ、社長の持つ株式の議決権が5倍となり、社長は適法に株主総会を開催でき、会社の運営が停滞してしまう危険性を回避することができるのです。
本制度を導入するには、株主総会において、すべての株主の半数以上で、かつすべての株主の議決権の4分の3以上の賛成をもって、定款にその内容を記載する必要がありますが、種類株式とは異なり、登記簿には記載されません。そのため、取引先や銀行などの利害関係者が本制度の存在を確認するためには、その会社の定款を確認する必要があり、会社としては常に最新の正確な定款を整備しておく必要があります。
この手法は、前記に挙げたように登記簿に記載されないため、種類株式以上に自由で柔軟な活用が見込める、まさに定款自治の「極致」ということができます。しかし、剰余金の配当及び残余財産の分配の権利両方を与えないとする内容を定めることができないなど、導入に当たっては内部の人間関係を含めた各種の検討が必要です。
(名南通信2008年10月号より)
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