前号で親子間のトラブル発生原因の第一に挙げた「引き継ぐものの本質が正しく理解されていない」理由は、かつては事業をそのまま承継しさえすれば自ずとその本質までも引き継ぐことができていたものが、現在ではイコールではなくなってしまったことに主因があり、その原因の原因は『事業の短命化』にあると思います。
実は私、実家に帰れば和菓子屋のバカ息子、事業の後継予定者でありました。紆余曲折を経て、今の仕事を天職として全うすることを決断し、後を継ぎませんでした。子供時代、父に連れられていったお客様先で「よっ、跡継ぎ、頑張っとるな!」と檄を飛ばされ、親戚の集まりでは「店を頼むぞ!」と期待を寄せられ、近所のおばちゃんからは「おいしいお菓子を作れるようにね!」と励まされ、何となく当然のこととして和菓子屋を継ぐものだと思っていたにも関わらず、です。
継がない決断をしたその原因を突き詰めた時、私が「“当時の事業”に囚われてしまっていたからである」といわざるを得ません。では一体“事業”とは何なのか?私共では「誰を対象に、どのような商品やサービスを、どのような方法で提供する商いなのか、を明確にするもの」と定義付けています。この定義に照らして当時の実家を表現するならば、
・田舎の一般消費者の方々に
・自店舗ならびに地域の菓子小売店、スーパーなどを通じて
・和菓子を製造販売する商い
となります。このように定義付けられる“当時の事業”に私は魅力を感じなかった、もっと言えば、その先行きに不安しか感じていませんでした。対象地域は過疎化が進み、地域の菓子小売店やスーパーは廃業によって減少するばかり。和菓子そのものも、今言うところのスウィーツの登場などによって食べられる機会が減少し、復活の目処は全く立ちませんでした。“当時の事業”そのままを継ぐものだと考えていた私は、結果として「継がない」という意思決定を下しました。"事業"の中に内在する“本質”に目を向けることもなく…。
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