前回解説した“譲る者”が持つ叡智・信頼・求心力・情報量・愛情・諦観といったさまざまな要素は全て属人的な能力、即ちその人個人に属する能力や資質であって、容易には引き継ぐことができないものです。一方で、“譲る者”が社内外に影響を及ぼし、現在の成果を挙げている要因もまた、これらの属人的な能力の資するところが大きいことも事実です。
巷ではよく「K・K・D・D・H(勘・経験・度胸・妥協・はったりの頭文字)経営ではいけない」と言われますが、経験豊かな創業者においては、一概にそうとも言い切れないところがあります。充分なデータ解析から出た答えよりも、創業者の思いつきの方が高い成果が出る、といった現象は少なくありません。それほど創業者の属人的能力は凄いものがあるものなのです(もちろん後継経営者の方の中にも、そのような高い能力を身につけられている経営者もたくさんいらっしゃいます)。
さてこのような“譲る者”の属人的能力を“継ぐ者”が垣間見た時、無意識・有意識を問わず、覚悟が鈍ってしまうのは、ある意味仕方がないことかも知れません。「本当に自分で経営者という重責が務まるのだろうか」と。
またこのような不安が生じると、それを埋めようとして
・自分には他にやりたいことがある(本物か、単なる逃げかは別にして)。
・子供の頃に構ってもらえなかった。
自分の子供にはそんな思いはさせたくない。
・今の事業に魅力を感じない(この考え方の間違いにつきましては、
本レポート「“事業”を継ぐことの落とし穴」をご参照下さい)。
といった気持ちが生まれやすくなるものです。これではなおさら覚悟を決めることなどできようもありません。
しかし実際は、後継者にしかできないこと、後継者だからこそできることがあります。そしてそのことを理解し、受け入れることができた時、初めて『肚括り』への第一歩を踏み出すことになるように思います。
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