財務省が2006年9月4日に発表した2006年4-6月期の法人企業統計によると、ソフトウェアを含む全産業の設備投資は、前年同期に比べ16.6%増と、2期連続の二桁の伸びとなりました。
また、同じく財務省発表の2005年度法人企業統計でも、全産業の経常利益は前年度比15.6%増、売上高も6.2%増となっており、いずれも過去最高であると日経新聞等で報じられています。
長期景気を持続する要因は設備投資の増加にあり、今回のように企業が競って企業間競争に打ち出すために積極的な投資を行っている状況は、評価に値します。
本来、景気回復になる状況においては、設備投資が先行し、次いで賃金等の上昇に結びつき、それが消費を刺激して景気が上向きになるというプロセスがあります。果たして今回の設備投資の増加は、本当に賃金の上昇に結びついているのかどうか、注目するところです。
これについて上記の財務省発表の4-6月期の法人企業統計をもとに大和総研が試算した中小企業の労働分配率では、3期連続で増加したとする一方、日経新聞が試算した労働分配率では、3四半期ぶりに低下したと、日経新聞紙上でそれぞれ報じられています。
もちろん労働分配率は付加価値に対しての割合ですので、人件費支払総額が増えてもそれ以上に付加価値が上昇していたら、労働分配率は低下します。
事実、人件費の増加率は1998年以来の高い伸びとなっています。
今回の日経の試算による労働分配率が低下したのも、企業の売上増加による収益拡大が、人件費の増加を吸収したことが要因と考えられます。景気回復が更に進んだとき、これがどう変動するのか、目が離せません。
現在、人手不足が、特にサービス産業において重要経営課題となっています。日本フードサービス協会が9月5日に発表した外食産業の雇用状況アンケート調査の結果においても、従業員の充足率は81.7%に留まっています。アルバイトの賃金も軒並み上昇しており、この状況が続けば、時給1000円の大台を突破するのも時間の問題かもしれません。人材確保のために、アルバイトを正社員化するなど、企業側の努力とコスト上昇も見込まれます。
果たして労働分配率の低下は、いつまで続くのでしょうか。確かに景気持続のためには所得を増やすほうが望ましいのですが、現在勢いのある企業でも、コストを増やすことで大きく収益構造を揺るがすことも考えなければなりません。景気が回復し経済が活況する状況においては、企業経営上のひずみを常に解消し続ける企業こそが生き残っていくのかもしれません。
名南経営センターグループ 代表
税理士・不動産鑑定士・CFP 佐藤澄男 |