2006年12月21日付の日経新聞夕刊に、上智大学名誉教授で死生学で名高いアルフォンス・デーケン氏の談話が掲載されていました。死生学とは、自分なりに生と死をどう全うするかを考えるものですが、氏はこの記事の中で「第三の人生」として、定年退職後の人生の締めくくりについて下記のように述べています。
「豊かな第三の人生を過ごすためには、六つの課題があります。一つは『手放す心を持つこと』。過去の業績や肩書きに対するこだわりを捨て、新たな出発をするつもりで積極的に生きること。二番目は『許しと和解』。死にいく人も、残される人も互いに許し許されること。第三は『感謝の表明』。これまでの人生を謙虚に振り返ると、自分がいかに多くの人に支えられてきたかを感じるはずです。素直に『ありがとう』と言えることが大切です」
「第四の課題は『さよならを告げる』こと。死は旅立ちです。別れのあいさつをきちんとしたい。第五は『遺言状の作成』。財産争いは意外に少なくありません。法律的に適正な遺言状を作っておくことは、残される人への心配りです。最後の課題は『自分なりの葬儀方法を考え、周囲に伝えておく』。これも周囲の人への配慮、思いやりです」
自分なりの人生を豊かに全うするためには、氏が述べるような第三の人生の考え方は重要であると賛同しながら拝読しましたが、特にこの第一の課題「手放す心を持つ」ということは、私も非常に大切なことと日頃から感じております。
企業においても、創生から始まり、一定の時期になると好むと好まざるとに関わらず必ず衰退期が訪れます。企業の場合は、人・物・金の戦略的行動で成長確立維持発展させることが可能ですが、人の場合は、そうはいきません。必ず衰退期は訪れます。そうなったときに過去の栄光にしがみついて生きていると、その後に生み出せる可能性のあったものまで、自発的ではなくむしろ他動的に失われてしまうということは多々あります。そうして失ったものに対し悲憤慷慨したり悩んだりを重ねると、自ずとストレスが増大し、それこそ第三の人生は暗いものになってしまいます。
それがもたらした栄光や幸福が多ければ多いほど、手放す心を持つことは困難です。しかし、同時に、しがみつけばしがみつくほど、逆にそれがもたらす人生の暗雲も大きくなります。
人生の輪廻を当然視し、「時期がきたら失うことも多くなるのは当然」と心に受け止めることが、余分なストレスをためずに前向きな気持ちで人生を謳歌する秘訣だと考えます。
名南経営センターグループ 代表
税理士・不動産鑑定士・CFP 佐藤澄男
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