2007年3月3日付けの日経新聞夕刊「あすへの話題」で、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が、「暗黙知の伝達」というコラムを寄せています。大変感銘を受けましたので、今レポートでご紹介します。
野中教授は、企業の定性分析について長年研究された方で、定量的な分析に偏りがちな企業の見方を定性的にみることへの重要性を説いてこられました。この流れからも、私も随分以前より先生に対し敬意の念を抱いており、今回の記事にも私自身感じることが多くありました。
記事の中身を一部抜粋して紹介します。
まず最初は「知識というものの奥深さは、際限が無い。言葉や文章により表現可能な形式知だけではなく、表現が難しい経験的・身体的知識である暗黙知があり、その相互作用により新しい知識が創造される。」という書き出しで始まっています。
コラム中段では楽天の監督、野村氏を例に挙げ、「捕手の古田を指導する際には言葉で説明するだけではなく、実際の試合局面と連動させて考えさせ実践・検証させた。思考により経験の質を高めて行くのである。ゲームの流れを読む感覚は、経験の蓄積である暗黙知から生まれる。」とあり、次いでそれが機能しなかった阪神を例に挙げ、「阪神では受け入れる基盤が不十分で、理詰めと実践という同じ方法は機能しなかった。結局、チームの変革には「厳父のような存在感ある監督」と「核になる選手」が必要と感じ、野村は星野を推薦して辞任する。」とまとめています。
いろいろな指導法がありますが、暗黙知ではなく形式知であれば、表現することは可能です。しかし、暗黙知の伝え方は、リーダー自身のこれまでの生き方が根底にあるため、それを伝える力が必要となってきます。
最後に野中先生は「長嶋、野村、星野の指導法は三者三様である。しかし暗黙知を伝達しようと、自らの「生き方」や経験を内面化し、言葉だけではなく全人格的なものとして表現するところは共通性を持つ。だから、難しい。」と締めくくっています。
先生の指摘の通り、やはり教えるものの全人格的なパワーがあってこそ、暗黙知を生かすことができます。日々の企業の現場でも、それを痛感することがよくあります。暗黙知を伝達することは並大抵のことではありません。決まりきった方法がないだけに、非常に難しいことです。教える者と教えられる者の両者が、常に感性を研ぎ澄まし、体当たりで臨むことが重要です。
そして更には、リーダーも自分自身を磨き続け、全人格的な人間力のパワーアップを常に図ることが必要不可欠ということを、念頭に置かなければなりません。
果たして、リーダーでいる人々は、自身の人間力をパワーアップできているのか、常に振り返ってみる必要があるのではないでしょうか。
名南経営センターグループ 代表
税理士・不動産鑑定士・CFP 佐藤澄男
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