2007年3月29日付の日経金融新聞「複眼独眼」に、「米のリタイアメントプア」というコラムが掲載されています。
米国の人口は約3億人。そのうち3600万人が貧困層と言われています。経営者の巨額な経営者報酬とこの貧困層の格差は、日本の格差レベルとは全く比になりません。更に米国では、退職者の生活不安の象徴として「リタイアメントプア」という問題がクローズアップされています。
同コラムではこの問題について、
「低い貯蓄率に加え、確定給付年金の閉鎖が相次ぎ、退職者の多くが老後の準備不足だ。401kプランに代表される確定拠出年金は拡大しているものの、従業員の四人に一人は加入手続きが取られておらず、この低加入率が将来の社会不安を引き起こしかねない。
確定拠出年金は加入者自ら投資商品を選択する仕組みで投資教育が必要だが、アメリカの投資教育の成果は芳しくないようだ。加入者の二割以上が自社株ファンドに投資し、分散投資が実践されていないのが現実だ。」
と述べています。
日本でも、米国を見習い、ファイナンシャルプランナーの制度が創設され、CFPとかFP1級技能士等の様々な称号が定着し活動が広がっています。しかし、お手本である米国ですら、投資教育の成果が芳しくないということは、いささか驚きを感じ得ません。
一般的には老後への対策として、様々な形で投資プランが施され実行されます。その基本はリスクをどう少なくするかであり、そのために分散投資は必須です。しかしその基本であるべき分散投資が、本場の米国でこのように後回しになっているということは、日本の今後の投資教育についても再考せざるを得ないのではないでしょうか。
「景気ダム論」という言葉があります。企業収益が増えると、ダムの水があふれるように下流の家計も潤すという状態を指す言葉です。家計が潤えば個人消費が増え、景気回復に繋がるのが一般論ですが、日本ではこのところ個人所得の増加も頭打ちです。そこへ更に老後への対策も怠ったとなると、日本でも米国同様「リタイアメントプア」問題が生じる恐れは十分にあります。
これから団塊世代の大量定年退職の時代を迎えます。比較的リッチなこの層に対し、さまざまな商機が取り沙汰されています。一方で、コストダウンのためのパート、アルバイト、人材派遣等への業務移管等に向けた動きが企業で加速し、大量の非正規雇用者を生み出しています。
先ほど紹介したコラムによると、非正規雇用者の75%は年収200万円以下とされ、1000万人を超える雇用者がワーキングプア問題を引き起こしているそうです。この人たちの将来を考えると、米国と同じリタイアメントプア問題が社会問題となるリスクは十分に考えられます。
少子高齢化が深刻な問題である日本でも、将来発生が予測されるこのリタイアメントプア問題について、国民が認識を持ちきちんと対策をすることが不可欠です。
名南経営センターグループ 代表
税理士・不動産鑑定士・CFP 佐藤澄男
|