政府の犯罪収益移転防止法案、いわゆるゲートキーパー法案が、先日衆議院本会議を通過しました。
この法案は、犯罪組織のマネーロンダリングを防止するために、金融機関等の業者をゲートキーパー(門番)にする制度です。ゲートキーパーは、取引の際に本人確認を行い、その取引記録を保管し、疑わしいと感じた取引は監督官庁に通報するという義務が課せられます。
今回通過した法案では、このゲートキーパーとして、金融機関の他に、貴金属商や不動産業者等の38業種が設定されました。
もともとこの法案は、OECD加盟国で結成される「金融活動作業部会(FATF)」がテロ資金や資金洗浄対策として勧告したもので、この勧告におけるゲートキーパーには、弁護士や公認会計士、税理士も含まれていました。しかし、特に弁護士界を中心に「依頼人を密告することになる」と猛反対が起こり、今回の法案では「士業」と呼ばれる5業種は通報義務が課されないことになりました。
確かに、我々税理士も含め、士業には顧客情報の守秘義務があります。今回の法案は「疑わしければ通報せよ」という法案ですので、ここに我々も含まれるとなると、守秘義務は果たされず、顧客も安心して我々に相談ができなくなるという状況に陥ってしまいます。
しかし一方で、今回の法案の存在以前の問題として、疑わしい取引が行われることに対して、我々は専門家として「顧客に意見する」という形でその防止に努めなければならないというのは言うまでもありません。
この話題について、日本中小企業経営支援専門家協会が発行する「DAILY NEWS」の2007年4月9日号でも、
「税理士・公認会計士等にとっても、今後全く無縁ではなくなってきた。「犯罪による収益の移転防止に関する法律」により、税理士等もマネーロンダリング関係情報と関わりを持つことになるからだ。税理士等は、同法が定める「疑わしい取引の届出義務」の対象業者から除外されたものの、同法により税理士に課せられる「本人確認及び本人確認資料の作成・保存」や「取引記録の作成・保存」などの責務が、同法の政省令に規定されるからである。
それだけに、今後、税理士等は、マネーロンダリング関連情報に 注意しなければならないということになる。」
と記されています。私自身も税理士として、このテーマには今後も十分に注目し情報収集していきたいと考えております。
要は、業者も企業も我々国民一人一人も、疑わしい取引に関与しないための正しい眼力と知識を持つことが、犯罪の歯止めとして何よりも重要なことです。ゲートキーパー法案は、監視体制やプライバシー保護の観点からもまだまだ課題の多い法案です。信頼関係の下に自由な取引が行われ、同時に犯罪を防止できる仕組み作りが望まれます。
名南経営センターグループ 代表
税理士・不動産鑑定士・CFP 佐藤澄男
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