2007年6月12日付けの日本経済新聞「十字路」は、東レ経営研究所 産業経済調査部チーフエコノミストの増田貴司氏による大変興味深いコラムでした。まずはそのコラムの内容を一部ご紹介します。
「グローバル市場が急拡大する中で、日本の電機メーカーは相対的に規模の小さい日本市場の中で、多機能・高品質の新製品を次々と創出している。しかし、多くのデジタル家電は、小ロットで製品ライフサイクルが短いため、規模の利益を享受できず、利益なき繁忙に陥っている。さらに、日本市場で売れる新製品は機能や品質が過剰なため世界市場では売れないという問題が表面化している。携帯端末では、独自の通信方式や放送規格を採用しているため、世界から孤立し、海外市場では販売を伸ばせないでいる。これらは、日本市場という特殊な環境に高度に適用するあまり、特殊化している事例と考えられる。」
以上、2007年6月12日日経新聞記事より引用
実際、日本製品の技術力の進歩が世界市場をリードしていると考えている人は多いのではないでしょうか。私もその一人です。
しかし、記事が指摘するように、製品の多機能高品質が、グローバル市場規模からみるとほんの一部分である日本市場という狭い市場だけで進化したとなれば、確かに大問題です。
最近車を運転しているとよく思うのですが、あまりにも機能が多重複雑化しすぎて、恐らく私の年代で使いこなせている人は非常に少ないのではないかと感じています。携帯電話も然りです。他にも身の回りのさまざまな機器が複雑化し、マニュアルを目の前にするだけでうんざりするものもたくさんあります。
問題は、高齢化社会が進展し、高齢化が高まれば高まるほど、今のような「多機能 イズ ベスト」という考え方だけでは、ニーズに応えることはできないということです。むしろ高齢者に対しては、思い切って機能をシンプルに必要最小限に抑え、逆にそのシンプルな機能を更に使いやすくすることに重点を置いた商品開発を進めることの方が求められるのではないでしょうか。グローバル市場においても同様で、多機能よりもむしろシンプル機能の方が受け入れられるケースも多々あるのではと思います。
実際、数年前に高齢者向けに開発された非常にシンプルな機能の携帯電話が大ヒットしたことは記憶に新しく、今も尚、人気を誇っています。
そう考えていたら、ふと過去の新聞記事を思い出しました。2007年6月1日付けの日経新聞国際面の記事です。米国アップル社のスティーブ・ジョブス最高経営責任者がマイクロソフトのビル・ゲイツ会長との討論会で述べた内容を紹介する記事ですが、その中でアップル社が2001年の「iPod」のヒットで完全復活を成し遂げたことについて、
「日本の大手家電メーカーが(使い勝手の良い携帯機器用の)ソフトを開発できなかったおかげだ」
と皮肉ったコメントを述べたことが紹介されていました。
アップル社の「iPod」の世界レベルでの大成功は、まさに多機能高品質がすべてではないということを証明しているのではないでしょうか。
車に然り、携帯に然り、その他オーディオ機器やパソコン、生活家電に至るまで、私達は使いきれない多機能に相当高額なお金を支払い、結局は宝の持ち腐れになっているということが、余りにも多いのではないでしょうか。
もう一度「シンプル イズ ベスト」に立ち返り、基本的にはシンプルな製品を市場に送り出し、必要な人だけに必要なだけの機能をオプションで付加するという形で対応することが、これからのグローバル市場において受け入れられる姿勢なのだと感じています。
冒頭で紹介した「十字路」のコラムは、非常に考えさせられる内容でした。
名南経営センターグループ 代表
税理士・不動産鑑定士・CFP 佐藤澄男
|