世界を拓く 東海の技 中国編
外注化文化にも配慮
記帳代行 若手の雇用創出に一役
ガソリン代6486円、クリーニング代2450円−−。上海事務所で、日本語のデータを下元に中国人社員が手際よくパソコンに打ち込み、日本に送り返す。中小企業から出納帳や給与台帳などを預かり、ネットを通じた記帳代行サービスを手がけているのが、経営コンサルタントの名南経営(名古屋市)だ。
中小企業では会計ソフトを使いこなせないなどの理由で、会計事務所に貸借対照表を作ってもらう例が多い。「記帳代行に追われ、後継者対策などの相談に応じる時間がないのが、事務所にとっての課題だった」(名南経営の影山勝行社長)。
04年、上海に単独出資で子会社「上海名南」を設立。中国に進出した中小企業の経営相談に乗るほか、記帳代行の外注化を図った。現在は会員の会計事務所の顧客など約2千社分について、毎月約50万件を処理する。
上海で処理できるのは、同社のグループが社内のネットワーク整備を元に6年前からビジネス展開を始め、ネット上に顧客ごとの専用画面を開設しているからだ。秘密保持にも注意を払う。パソコンにはフロッピーディスクや印刷機などは初めから付けず、顧客とのデータ送受信は暗号化したサイトでやりとりする。
業務を支える約30人の中国人社員の多くは、上海工商外国語職業学院の卒業生たちだ。汪晶さん(22)は「日系企業で経験を積み、日本流のマナーも学びたかった」。唯一にの男性、侯文波さん(22)はインターネットカフェを辞めて転職してきた。以前の職場で千元(約1万6千円)だった月給は倍以上に増えた。
同学院の張明々常務副主任(46)は「都会の一人っ子は3Kの職場を敬遠し、外資系ホワイトカラーの職場に人気が集まる」と指摘する。しかし中国では大卒者の増加や、国営企業の整理で失業した中高年の採用促進などを背景に、若手は就職難だ。同学院の日本語学部が上海名南と提携し、日本簿記を授業に採用したのも、就職先の確保のためだった。
サービス業の発展は中国政府も重視しており、外注産業には追い風が吹く。しかし、労務管理は難しい。上海名南の小島成樹総経理(37)は「二度と同じ経験をしたくない」というほど給与制度で苦労した。
当初は基本給に評価給を加えていたが、中国では給与明細をオープンに見せ合う習慣があり、評価給を巡って社員から不満が続出した。個人別の売り上げ連動制を採用すると、皆が簡単な仕事を選ぶようになった。固定給制にすると仕事をさぼる社員が続出、リーダー格の社員や小島総経理が深夜まで残業する日々が続いた。
最後に行き着いたのが現在の配分制度。チームの売り上げに応じてチームごとの配分額を決め、リーダー格の社員が月ごとの処理量や難易度などをもとに個々の社員への配分額を決める。顧客のクレームに連動した罰則制度も設けた。
「サービスの展開には教育や労務などのシステム化が必要で、難しさは予想以上だった」と小島総経理。ネットを使えばサービス業も海を越える。しかし、ビジネスとして成り立たせるには、文化や習慣を乗り越える工夫が欠かせない。
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